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2005.01.20

巨人の肩──グーグルの文献検索

 先月号で、グーグルの米国版サイトが本の全文横断検索を始めたと紹介したが、グーグルはまた新しい検索をスタートさせている。
 査読論文、学位論文、本、プレプリント、アブストラクト、技術報告といった学術文献の検索で、「グーグル・スカラー」と名づけられ、ベータ版のサイトができている。

ジャンルを問わず、著者名やキーワードで検索できる。検索順位は、著者や発行媒体、引用された回数などを勘案しコンピューターのプログラミングが判断した重要性によって決まる。検索結果画面には、タイトルや著者名、該当個所の引用などともにこれまでに何回引用されたかも表示される。この「何回引用された」というリンクをクリックすると、その文献を引用した文献リストがずらっと出てきて、それらにもアクセスできるようになっている。
 いずれの検索結果画面でも、リンクをクリックすると、文献がそのまま出てくることもあるし、目次だけ、要約だけ、あるいは有料データベースやオンライン書店のアクセスしたりといろいろな場合がある。ともかくその文献へのアクセス方法がわかるという仕組みである。
 グーグル・スカラーの検索データベースに該当の文献がない場合は「ウェブ・サーチ」というリンクが現われ、それをクリックすると、文献タイトルや著者名でグーグルの通常の検索が行なわれる。あるいは「ライブラリー・サーチ」というリンクが現われることもある。これをクリックすると、「オンライン・コンピューター・ライブラリー・センター」という非営利団体の「ワールド・キャット」というデータベースが検索され、その文献を所蔵している最寄りの図書館を教えてくれる。地域名を「Japan」などで検索すれば、日本の国会図書館や大学図書館などもヒットする。
 前回、「グーグルは、ニュース検索、本の検索と、完成度の高い情報に絞った検索の需要を感じているようだ」と書いたが、この学術文献検索もそうした発想の延長に生まれたものだろう。また前回、グーグルは、自分のコンピューターとウェブ上のデータをシームレスに検索できる英語版ソフトも無料配布していて、本の検索などとあわせて、「グーグルはネット内外の情報をできるだけ多く一貫した検索システムでアクセス可能にしようとしている」と書いたが、このグーグル・スカラーもまた図書館のデータベースまで検索対象に含めようというもので、そうした方向の動きのひとつといえる。
 グーグル・スカラーの検索ページを開くと、「巨人の肩に乗っている」という言葉が検索ウィンドーの下に現われる。これは、ニュートンの言葉──「私がより遠くまで見通すことができたのだとしたら、それは巨人の肩に乗っていたからだ」からの引用だそうで、これまでの研究の積み重ねという「巨人の肩」の上に乗って新たな学術的研究が成り立つことを語ったものだ。この検索を作った技術者は、「こうしたプロセスを助けるためにこの検索を作った」とモチーフを語っている。
 かつて編集者として仕事をしていた「現代思想」という雑誌の次号予告には「領域を超えて考える雑誌」という標語が入っていた。「領域を超えて考える」というのはもはや当たり前のことだから、そうした標語はなくなったかと思って見てみたら、いまでも書かれている。「領域を超えて考える」のは当たり前のことのようだが、実際のところ、学問領域はますますタコツボ化しているようだから、この標語はたしかにまだ有効なのかもしれない。
 しかし、グーグルのこの検索は、「領域を超えて考える」ことを確実に容易にするはずだ。もちろんよく知っている領域の文献を網羅的に調べることもできるが、知らない領域でも検索キーワードを使って誰でも無料でたちどころにその分野でもっとも重要な文献にアクセスできるわけで、その意味はきわめて大きい。引用回数を機械的にカウントするだけでなく、掲載媒体などまで勘案して検索結果表示の順位を決定するというから、この仕組みがきちんと機能しているのであれば、こうした検索は、その文献の「重要性」まで決定することになるだろう。
 たいていの人は、数多くの検索表示があっても、最初の検索結果ページの冒頭のいくつかしかクリックしないという調査結果が出ている。研究者の場合は、もう少し熱心に検索結果にあたるかもしれないが、いずれにしても検索の最初のほうに出るかどうかはその文献の死命を決することになる。検索結果の最初のほうに現われた文献は、さらに引用されてより重要視されていくだろう。前回も書いたように、電子的なネットワークの中に存在するようになった文書は、検索結果にいかに表示され、リンクされるかが決定的な意味を持つようになる。グーグル・スカラーは学術文献についてもそうした動きを促進するにちがいない。

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コメント

はじめまして、msaicc と申します。

”巨人の肩──グーグルの文献検索”という記事を読ませていただきました。

たぶん、これから本格的な”意味処理”、”知識処理”の時代に突入してゆくことでしょう。

その”魁”のひとつが”グーグル”さんなのでしょうね。グーグルさんを"凌ぐ”ほどの会社を日本で立ち上げられればいいですね!

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