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2004.12.03

対決! グーグル・ニュースvsヤフー・ニュース

新聞なんか見ない、ニュースはネットで十分、
という人が増えてきた。となれば、ネットでニュースを
どう見るかは、ますます重要な問題になってくる

●来日したネット界の寵児
 先月、グーグルの2人の創立者サージ・ブリンとラリー・ページが来日して会見するというので行ってみた。グーグルのやってきたことを見るにつけ、この2人の創立者がいったいどんな人物なのか、興味は増すばかりだった。

 彼らはスタンフォード大学の大学院に在籍していたときに検索エンジンの開発を思い立ち、98年に会社を作って、この夏には株式公開を果たした。31歳の若さで億万長者の仲間入りをしたわけだが、株式公開の仕方はふつうではなかった。証券関係者の反発にもかかわらずオークション方式を採用し、株主の議決権についても独特の方式を導入した。大学でコンピューターの勉強をしたわけだから、検索の新しいアイデアを次々と実現することには不思議はない。しかし、経営や組織運営についても斬新な考え方を通してきている。
 IT企業の幹部を歴任して経験を積んだ人物をCEOや財務の責任者に迎え入れているので、彼らの意見を採り入れてはいるのだろうが、「経験を積んだ」ということはこれまでの習慣にとらわれるということでもある。斬新なやり方が、そうした人々から出てきたとも思えない。それに、最終的な決定は若い2人の創立者がやっているというウワサも聞く。検索技術だけならともかく、ほかの面でも思い切った方法をとり続ける彼らはどんな奴らなんだろうと、興味津々の気分で記者会見場に向かった。
 スーパースターを目にするかもしれないという期待は、しかしあっさり裏切られた。
グーグルの社内風景を撮った写真などにもよく映っている原色の大きなボールをまといつかせながら会見をする2人は、たいした理由もなくけらけらよく笑う、アメリカのどこの大学にでもいそうな──というよりむしろ子どもっぽくさえ見えた。
 日本のネット企業でも、ライブドアの堀江社長などはほぼ同じ年だ。堀江氏は、Tシャツは着ていても、ふてぶてしい雰囲気もあって、新興企業のトップの貫禄はありそうだ。グーグルの2人は堀江氏よりも子どもっぽい感じだった。
 また、能力のある人間が2人集まると仲たがいしがちだが、一緒に検索エンジンの開発を始めてから10年近くたったいまでも仲がよさそうなのも不思議だった。けれども、2人とも我が強くなさそうだから、それでうまくいっているのかもしれない。1時間ばかりの短い記者会見のあいだの観察で、ほんとうのところどうなのかはわからないが、ともかくどんな人物なのか見に行って、いよいよ謎が深まった気分がして帰ってきた。

●復権する地方メディア

 9月1日に日本語版が立ち上がったグーグルのニュース検索「グーグル・ニュース」についてインターネット調査会社のネットレイティングスが興味深い調査結果を発表している。
 本誌のニュース欄でもすでに報じていたが、グーグル・ニュース日本版にアクセスした人は9月だけで103万人。313万人のアメリカに次ぐ数字で、自宅からアクセスした人の割合でいえば、アメリカを上回りさえした。サービス開始直後の物珍しさでアクセスした人も多かったにちがいないが、ともかくかなりの好成績だったわけだ。
 大手新聞社では、朝日、日経はグーグル・ニュースの検索対象になることを了解し、読売、産経は拒否している。毎日新聞は途中から検索対象になることを承諾し、最初から加わっていた大手新聞社は2社だったわけだが、グーグル・ニュースを使ってアクセスしたサイトの1位は日経で、全利用者のうち14パーセントがアクセスしたという。2位は朝日で12・9パーセント(ただし、ドメイン名の違っている朝日の地域情報は別に集計されていて、あわせると18パーセントになる)、そのあと日刊スポーツ、デイリースポーツとスポーツ新聞2紙が続き、通信社のロイターが5位。興味深いのは、8位の河北新報、9位の中日新聞、同率で10位の東京新聞、四国新聞と、ベスト10のなかに地域新聞が4つも入っていることだ。さらに6位の朝日新聞の地域情報サイトも含めて、グーグル・ニュースは地方のメディアへの注目度を高める働きをしたといえる。
 また、河北新報のサイトにアクセスした人のうち21パーセント、ロイターは36パーセントがグーグル・ニュースからのアクセスだったというから、グーグル・ニュースで取り上げられることがアクセス数の増加につながる、とくに大手新聞社のサイトに比べてブックマークされることの少ないニュース・サイトについてはいよいよそうしたことがいえる調査結果だった。
 これまでも、「全国区」ではなかったメディアがネットによって注目されるということは起こった。ヤフー・ニュースのトップ・ページに並ぶ記事はヤフーが配信契約を結んでいる大手メディアのものばかりだが、トピックス・ページには、地方新聞などの外部サイトへのリンクもある。たとえば山梨の上九一色村にオウム真理教の拠点があるということで話題になれば山梨の新聞に、和歌山で青酸入りカレー事件が起これば、和歌山のフリーペーパーにリンクが張られ、アクセスがどっと増えるということが起こった。こんどのグーグル・ニュースでは、もっともアクセスの多いトップ・ページに地方のメディア・サイトの記事見出しが並んでいるのだから、こうした調査結果になるのは理解できる。
 おもしろいことに、大手新聞社のあいだで、ヤフー派とグーグル派に分かれる、といったことが起こってきたようだ。グーグルの検索対象になっている新聞社は先に書いたとおり朝日、日経、毎日だが、朝日と日経はヤフーとは配信契約を結んでいない。ヤフーと契約すれば配信料はもらえるが、ヤフー内に記事が掲載されるので、自分たちのサイトへのアクセス増にはつながらない。自分たちのサイトで、広告や有料記事データベースなどによって多少ともまとまった収入が見こめるメディアはアクセス減を嫌い、そうでないところは配信料をとった、というところだろうか。

●ヤフーとグーグル、すぐれたニュースサイトはどっち?

 利用者にとってより魅力的なのはどちらのサイトだろうか。
 グーグル・ニュースはロボット・ソフトが検索対象のサイトをまわり、プログラムにしたがって記事を分類し、優先順位を決めている。一方、ヤフーのニュース・ページは人手をかけて分類・掲載されている。コスト・パフォーマンス的に見れば、グーグルのほうが割がいいわけだが、利用者にとってはやはり一長一短ある。
 グーグルの日本法人のトップは昨年6月のインタビューで、「米国では複数のニュースソースを比べる傾向があるが、日本では新聞を読み比べる習慣はあまりない。日本でユーザーのニーズがどれだけあるかが重要」と、グーグル・ニュースの日本への導入をためらうようなことを言っていた。1年半のあいだにこの問題が解決されたとは思えない。
 ライバルのヤフー・ニュースでは、トピックス・ページにアクセスすれば、最新のニュースだけでなく、さまざまな社説や関連サイト、用語解説までがひとつのページにまとめられている。記事を読み比べられることにメリットを感じる人が少ないのだとすれば、人手をかけてより編集されたヤフー・ニュースのほうにメリットを感じるが日本では多いかもしれない。
 また、ニュース掲載の速さについても、グーグルは分【ルビ:ぶ】が悪い。ロボット・ソフトがニュース・サイトの記事を集めてまわるので、数十分ぐらいの差とはいえ、どうしても掲載が遅くなる。
 ただ、米国版グーグル・ニュースでは、キーワードを設定しておけば合致したニュースをメールで教えてくれるようになっている。特定のニュースが気になっているときなどはとても役に立つ。日本版にはまだこの機能がないが、「記事を見比べる」以外の利点をグーグルがどれだけ提供できるか、そのあたりが勝負の分かれ目といえそうだ。

関連サイト
●グーグル・ニュースの最初の1か月の利用状況の調査結果を発表したネットレイティングスのリリース。家庭からインターネットにアクセスした人の2.8%が利用したといい、米国版の利用率2.3%を上回ったという。
●「グーグル・ニュース」のもう一つのライバル、米MSNBCの実験サイト「ニュースボット」は、グーグル・ニュースと同じく「全自動」で、ロボット・ソフトが巡回して記事見出しを集め、コンピューターによって分類し並ぶ順番が決まる。グーグル・ニュースとの違いは、以前見た記事の履歴が参照されて興味のありそうな記事を優先的に表示してくれるパーソナライズ機能が付いている点だ。MSNBCのサイトを作っているマイクロソフトは、日本では毎日新聞と提携してニュース・サイトを作っているから、この機能はいずれ日本でも導入されるのだろう。
●勝つのはどちら? 9月1日にサービスを始め、アメリカに並ぶアクセス数を集めた「グーグル・ニュース」は、コンピューターが全自動でページを作る。現在グーグル・ニュースは世界15の国・地域で提供されている。

(『週刊アスキー』「仮想報道」Vol.364)

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