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2004.11.23

書き手からお金をとる「出版」

 前号で、ネット企業が電子的出版活動に乗り出したら、出版社とは違い、個人のセルフメイドの出版活動を助け、また個人のコンテンツにアクセスしやすくするといったことをやるのではないかと書いた。実際そうした様々な動きが進んでいるが、この点はかなり本質的なことのように思われるので、もう少しそれについて書いておこう。

 これまでのたいていの出版活動は、読み手からお金をとることを考えていた。本の代価を読み手からもらうのは当たり前じゃないかと思うかもしれない。しかし、ネット企業がやっていることはかならずしもそうではない。書き手からお金を取っていることが多いのだ。たとえばホームページ。これこれの容量までのホームページは無料などということになっていても、こうしたサービスはプロバイダーへの加入料などに含まれていることが多いし、もちろん本格的なホームページを作ろうと思ったらお金を払わなければならない。ネットの情報は無料と思われているがじつはそうではない。ただ、読み手ではなくて、情報の発信者がそのコストを広く薄く、場合によっては広告を掲載するなどの間接的な形で出しているのだ。
 読みやすい端末は依然として普及しないが、書き手が料金を払ってくれるビジネスならば、読みにくさというのはさほど決定的なデメリットにはならないだろう。読み手ではなく、とりあえず情報発信者が満足しさえすればいいからだ。実際、読みやすい端末が普及しなくてもホームページは増えているし、ウェブ上の日記「ウェブログ」なども日本でも流行り始めている。さらに紙であれ電子的な形態であれ、もっと長文の著作物の出版をサポートしようとする動きもネット企業から出てきている。
 書き手が費用を負担するビジネス・モデルが従来の出版活動になかったかといえばそんなことはない。自費出版がある。また、自費出版ではないが、9月下旬号で紹介した英治出版のように、著者などが投資するという形で出資して出版するビジネス・モデルもある。英治出版は紙の本の出版をしているわけだが、書き手がコストを負担しているという意味では、ネット的な出版活動といえる。
 そのほか学会誌などは、書き手がお金を払うシステムになっていることが多い。学会誌は、お金のかかる紙の出版ではなく、ネットに移行する様子も見せている。アメリカなどでは、学会誌のデータベースを運営して利益をあげている会社もあると聞く。ともかく書き手がお金を払う出版は、ネットへの移行がしやすだろう。
 当然ながら、書き手がコストを負担し読み手は無料のメディアで、読み手から代価を取ろうとしてもなかなかうまくはいかない。読んで楽しんだり情報を入手する媒体ということでは紙媒体もネットも同じだが、少なくとも今のところはこのような根本的な違いがあるわけだ。
 ところが同じネットにアクセスできるメディアといっても、携帯電話はそうではない。これは情報の受け手がコストを払うのが当たり前のメディアである。小さい画面なのにどうして電子書籍は成り立つのかと思うが、少なくとも今のところビジネス・モデルとしては理にかなっている。
 さて、こうした分析はともかく、では電子書籍を普及させるためにはどうしたらよいのか。
 即効薬はないが、少なくとも個人のセルフメイドの電子的出版活動にもう少し理解を示すことが必要だろう。ソニーと松下、ふたつの電子書籍端末はともに個人の情報発信活動をサポートしていないが、こうしたやり方は、デジタルな出版活動を理解していないと言われても仕方がない。読み手からではなく、書き手から料金を取ることがありうるというのは当たり前のようだけど、「コロンブスの卵」でもあって、こうした可能性を考えてみることが必要だろう。
 また、前回、講談社の「Web現代」がもう少しで黒字になろうとしているという話を紹介した。アダルト向けの有料コンテンツを提供しているということが大きいと思われるが、このサイトは、無料で読めるプロの作家たちのエッセイやインタビューなどもたくさん載っている。有料、無料のコンテンツをうまく組み合わせ、なんとなくアクセスしてもそれなりにおもしろいサイトになっている。ウェブでの連載が本にまとまればコストを回収できるという計算があるのだろうが、とりあえずは情報発信者側の持ち出しでページを作ることで、多くの読者を獲得しようとしている。有料のコンテンツだけを提供し、お金を払わない人には用がない、という即物的なサービスをネットでやっても失敗する。
 自費出版の出版社もあるわけだから、出版社が素人の相手をできないわけはない。ただ、そうした仕事はレベルが低いものと考えられている。しかし、「自費出版」やセルフメイドが当たり前のインターネットで、そうした観念を持って電子的な出版活動に乗り出してもうまくはいかないだろう。

(出版ニュース 2004年10月下旬号)

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