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2004.11.26

「コイズミ」はほんとにブッシュの友達なのか?

ブッシュは、「コイズミは友達」という一方で、
日本などに対して明らかに差別的な対応をしている。
ブッシュ政権は世界をどうするつもりなのだろう?

●孤独で内向きのブッシュ政権

 ブッシュのサイトが海外からのアクセスを拒否しているという話を本欄で書いた。その回の反応が大きかったようなので、その後の経過を含めてもう少し書いておくことにしよう。

 この回の原稿を編集部に渡した数日後の26日、ネットのアクセス状況をモニターしているイギリスの会社「ネットクラフト」が、アメリカ国内4か所とロンドン、アムステルダム、シドニーからのブッシュ・サイトへのアクセス状況を調べたところ、アメリカ国内は問題なかったが、国外の3か所では25日からブッシュのサイトにアクセスできなくなっていることに気がついた。サイトでその事実を明らかにしたところ、英BBCなど海外のいくつものメディアが報じた。この件について世界で最初に報じたのがもう少しで本欄になるところだったが、ネットクラフトが気がついて「世界的スクープ」は逃してしまったわけだ。
 その後ブッシュのサイトは、「セキュリティ上の理由で」海外からのアクセスを制限していることは認めた。しかし、それ以上の説明はいまもってない。あとで書く理由で、海外のハッカーを恐れてというより、国内からのアクセスに万一でも支障をきたさないために姑息で稚拙な対策をしたとしか考えられない。アクセスできなかったブラウザには「サーバーが見つからない」ではなくて、「あなたにはアクセス権限がない」と事実そのままの露骨なアクセス拒否の表示が一時は現われた。こんな刺激的な表示をしないことも可能であり、彼らがいったい何を考えているのかよくわからない。
 選挙後数日して海外からのアクセス拒否は一部解除されたようで、アムステルダムとロンドンからはアクセスできるようになったと、8日になってネットクラフトは伝えている。ただし、シドニーからは依然としてアクセスできないという。日本は調査ポイントになってはいないが、選挙後10日以上たったいまでもやはり(ほとんど)アクセスできない。ヨーロッパからのアクセスができなくなる25日より以前にも日本からはアクセスしにくかったから、ふたたびその状況に戻ったことになる。ヨーロッパからはアクセスできるが、アジアやオセアニアなど太平洋のこちら側からのアクセスは制限されているように思われる。
 共和党全国委員会のサイトで10月19日に何らかのトラブルがあり6時間ほどアクセスできなくなるという事故があったが、その2日後の21日からブッシュのサイトは「アカマイ」という会社に仕事を頼んでいる。アカマイはコンテンツデリバリサービスというのをやっていて、契約者のサーバーにあるコンテンツをアカマイのサーバーに保存【ルビ:キャッシュ】して、それを表示することでもとのサーバーに負荷がかからないようにしている。アカマイはこの技術を開発、98年に会社を設立して、ヤフーをはじめとするポータル・サイトやニュースサイト、Eコマースなどアクセスが一時に集中しがちなサイトにこの技術を提供している。
 ブッシュのサイトはつまり殺到するアクセスへの対策をしているのだ。万一もとのサーバーがダウンしてもその間はアカマイのサーバーがカバーするようにもなっている。にもかかわらず、ブッシュのサイトはなぜ海外からのアクセスを制限しているのだろう。
 10月26日になってアクセスできないことに気がついたヨーロッパなどでは、アカマイへのサービス委託が関係しているともとれる記事も出たが、太平洋のこちら側ではアカマイへの委託以前からしばしばアクセスが拒否されていたわけで、アカマイのせいとは言えないだろう。前に書いたように2000年の選挙戦のときからこうしたことは起こっており、ブッシュのサイトの以前からの方針としか考えられない。
「『コイズミ』は友人で、日本とは(かつては戦争をしたが)いまは良好な関係を築いている」と、ブッシュは選挙戦の演説でさかんに語った。しかし、このふるまいを見ると、じつはアジアを軽視しているとしか思えない。「セキュリティ上の理由」以上の説明をしないのは、それ以上のことを言えないからだろう。

●ビン・ラディンの高笑いが聞こえる

 アメリカ大統領選挙の直前にメッセージビデオを送りつけてきたビン・ラディンは、ブッシュが勝つことをねらったのではないかと前回書いた。「ブッシュが勝ったら9・11の再来だぞ」とばかりに脅しをかければ、アメリカ国民の気質としては「脅しに屈したらダメだ。ブッシュのもとに結束しなきゃ」ということになる。ビン・ラディンも当然そんなことは予想したに違いない。それどころかむしろブッシュが勝って、アメリカと世界の亀裂が大きくなることこそが彼の望みなのだろう。ブッシュ再選が決まった後、アメリカ軍は、ファルージャの町に対して激しい攻撃を仕掛けた。来年1月に選挙を強行するにはほかに手がなかったのだとしても、過酷な戦闘が繰り返されればイスラム世界とアメリカの対立はいよいよ厳しくなり、それにともなって国際社会の亀裂も深くなっていくだろう。いまごろ世界のどこかでビン・ラディンは高笑いをしているのではないか。
 ブッシュを勝たせたアメリカ人は、今後、世界がどうなっていくと思っているのだろうか。
 大統領選挙後、ギャラップが興味深い調査をしている。「次の4年間で、ブッシュは国をより統合すると思いますか。それとももっと分断するでしょうか」。さて、アメリカ人がなんと答えているかというと、57パーセントは「統合する」と答え、39パーセントが「分断する」と答えている。「融和に向かう」と答えたアメリカ人が多いが、選挙ではそもそも半分強の人がブッシュを支持したわけで、勝って満足している人々が呪われた未来を予想するはずはない。共和党支持者は、当然ながら選挙結果を喜んでいるが、民主党支持者の4分の3は選挙結果を聞いて「うろたえた」と言い、さらにその7割は「とてもうろたえた」と答えたとギャラップは伝えている。
 また、ギャラップは国際版のサイトで、世界各国がアメリカについてどんなイメージを持っているかを調査し、10月に結果を発表している(調査は今年の6、7月に行なわれた)。朝日新聞もフランスのルモンド紙などと共同で対米意識調査をやり、やはり先月結果を発表しているが、朝日の調査は10か国が対象なのに対し、ギャラップのほうは60か国以上について調べている。それによれば、アメリカについて否定的イメージを持っている人は34パーセントで、G8を構成している先進8か国のなかでダントツのトップで嫌われている。
 ギャラップのサイトで見ることのできる10月の発表は簡単なものだが、昨年行なわれた調査についてはもう少し詳しい内容が明らかになっている。「アメリカの外交政策が自分の国にどんな影響を与えていると思うか」を尋ねていて、「悪い影響」と答えた人より「いい影響」と答えた人が多かったのは52か国中10か国だけ。コソボを筆頭にアフガニスタン、イスラエル、グルジアと紛争地帯のいわくつきの土地柄のところが並んでいる。日本は68パーセントの人が「悪影響」と答えており、「好影響」と答えた人は13パーセントしかいない。アメリカの外交政策について否定的に見ている国の第2位である(52か国中トップはスイスで、フランスは日本よりはまだましで3位)。
 これらの調査を通してみると、9・11のテロ後、世界的にアメリカの外交政策の悪影響を感じる人は増え、イラク戦争前が最悪。戦争が終わって少し回復したが、昨年末にかけてまた悪化、少なくとも今年の6、7月までは改善された様子はない。9月から10月にかけて行なわれた朝日新聞などの調査でも、日本人の4人に3人は、この3年でアメリカに対する見方が悪化したと答えており、よくなったという人は17パーセントしかいない。
 ギャラップは「誰が勝っても、新しい大統領はアメリカに対する悪いイメージを改善しなければならない」とまとめているが、はたしてそれは可能なのだろうか。海外からのアクセスを拒否するようでは、期待してくれというほうが無理だろう。

関連サイト
●世界の人々がアメリカについてどういうイメージを持っているかを調査したギャラップ・インターナショナルの調査。「人々の声」というタイトルで行なわれているシリーズ調査のひとつ。アメリカの外交政策が各国に与える影響についての昨年行なわれた調査のほうはhttp://www.voice-of-the-people.net/ContentFiles/vop2004.aspにある。
●第2期ブッシュ政権についてどう思うか、大統領選挙直後のアメリカ人に尋ねたギャラップ社の調査。ブッシュが再選されたと知って「感激した」が23パーセント、「将来を楽観した」が33パーセント、「悲観した」が18パーセント、「ぞっとした」が24パーセント。このサイトのレポートは(1か月の試用期間を除いて)有料だが、http://www.pollingreport.com/2004.htmで結果の数字を見ることができる。
ピュー・リサーチセンターも選挙後行なった調査の結果を11日に発表した。ケリーを支持した4人に3人は困惑し、3人に1人は怒りを感じたと答えている。また、10人中2人はインターネットで多くの情報を得たと答え、30歳以下に限ると10人中4人。どちらの数字も4年前の選挙時から倍増している。

(『週刊アスキー』「仮想報道」Vol.363)

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