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2004.08.02

本格化する宇宙葬ビジネス

まもなく3年ぶりに宇宙葬が行なわれる。
日本人参加者は回を重ねるごとに増えているが、
日本は、米宇宙産業注目の宇宙葬マーケットらしい。

●メモリアル・スペースフライト

 3年ぶりに「メモリアル・スペースフライト」、つまり宇宙葬がこの秋、行なわれる。

「ファルコン」と名づけられたコスト・パフォーマンスのいい新ロケットが完成し、来月にはバンデンバーク空軍基地の発射台に設置される。テストの後10月か11月には打ち上げられる予定である。
 宇宙葬はときどきニュースになってきたから耳にした人も多いだろう。97年にアメリカのセレスティス社が始め、今年でもう5回目になる。小さなカプセルに7グラムの遺灰を入れてロケットで打ち上げ、地球の軌道に乗せて短ければ半年、長ければ何百年にもわたって宇宙空間をまわり続ける。ロケットの寿命が尽きたときには地球の重力に引き寄せられて大気圏に突入し、消滅する。99年に役目を終えた月探査機「ルナ・プロスペクター」が遺灰を積んで月に衝突したときには「宇宙を汚すな」という非難が起こったりもしたが、完全に消滅してしまうなら、クリーンな「最期」ということになる。
 01年までは1、2年ごとに宇宙葬は行なわれた。しかし、9.11テロの10日後に打ち上げられた第4回以降3年間は打ち上げられていない。しかも、前回はロケットを軌道に乗せられず、失敗に終わった。セレスティス社のトップ、チャールズ・シェイファは、失敗直後には次のロケットを翌年中頃に打ち上げる予定だと言っていたから、予想外に長い年月かかったことになる。その間に、セレスティス社のサイトのコンテンツはほぼなくなり、同社のサイトにアクセスすると、業務を引き継いでいるスペース・サービス社のサイトに飛ぶようになってしまった。
 打ち上げ失敗がありうることは宇宙葬の契約時から想定されている。契約者は2回分14グラムの遺灰を預け、失敗した場合は次回も打ち上げてもらえる。実際、前回申し込んだ50人のうち48人は再打ち上げを申し込んだという。つまり、99年の第3回以来5年間、宇宙に葬られる日を待ちわびている家族たちがいるわけだ。
 105万円という価格にもかかわらず、現在までに140人が参加している。日本人は第2回の1人を手始めに、第3回で10人、第4回で14人、そしてこの秋の第5回では新規申し込みだけで25人(前回の契約者とあわせて39人)と着実に増えている。日本語サイトには、今年の秋の宇宙葬の申し込み受け付けは終わったと書かれているが、日本総代理店のウィルライフ社によれば、打ち上げスケジュールが延びたので9月ごろまでは申し込み可能だそうだから、日本人参加者はさらに増える可能性がある。
 スペース・サービス社は、今回成功すればこの新しいロケットを使って年に3、4回のペースで打ち上げるというから、いよいよ宇宙葬ビジネスは本格化することになるだろう。これまで遺灰は7グラムが最小の単位だったが、1グラムから受けつけ、価格を1000ドル(11万円)に下げることも考えているらしい(7グラムの遺灰とビデオ撮影などのパッケージは5300ドル)。いま宇宙葬をしているのはスペース・サービス社一社だが、日本で同社の宇宙葬を取り扱っている業者は全国にあり、日本語の宇宙葬サイト「宇宙葬コム」などにも店舗のリストがずらっと並んでいる。宇宙葬などというといかにも奇抜な感じがするが、葬儀業界ではサービスのひとつとして意外に認知されているのかもしれない。
 宇宙葬を取り扱っているそうした会社のひとつ「エターナル・ジャパン」のサイトを覗いてみると、宇宙葬以外にも斬新な葬送メニューが並んでいる。
 たとえばエターナルプレート。
「エターナルプレートは、お骨そのものでお作りする永遠のメモリアルプレート“究極の形見”です。パウダー状に砕骨した焼骨を、高温でゆっくり焼成させる事で、ファインセラミックスの美しいプレートに生まれかわります」とのことで、「表面には、故人のお名前・出生年月日・死亡年月日が刻印され、お写真(遺影)を一緒に彫刻することもできます。裏面は、故人の好きだった言葉や後世に残すメッセージなど自由なデザインが可能で、面影やパーソナリティーとともにその方の生きた証をいつまでも残しておくことができます」。
 ‥‥骨のプレートねえ。個人的にはちょっと勘弁という気がするが、「エターナルプレートは、 従来の葬法(お墓や散骨など)ではない“新しい供養”を望む多くの方々の願いから誕生しました」と言われてみると、なるほどという気がしないでもない。葬式のときだけ生臭坊主が袈裟を来て現われてお経を読み、バカ高い代金を払わなければならないなどといった葬式の現実に出くわすと、ともかくもうちょっと違うことをしたいという気になってくる。ちなみにエターナルプレートのお値段は、85ミリ×40ミリの標準的なサイズで21万円から。写真入りだともう3万円ほど高くなるらしい。不純物を取り除き高圧処理するなどの手間をかけるというが、払うほうからしてみれば安いとはいえまい。
 エターナル・ジャパンのサイトには、遺骨をペンダントにしたり、散骨もできるように粉(パウダー)にするといったメニューもある。「エターナル・ペンダント」はもっとも安いシルバータイプで15万7500円。「エターナル・パウダー」のほうは5万2500円。生臭坊主の厄介にはなりたくないが、永遠の存在になるのはやっぱり大変だ。

●宇宙葬最大の市場は日本

 ところで、アメリカの宇宙産業が、「即座に最大の宇宙葬市場になる可能性がある国」と見ていたのはじつは日本である。
 NASAのサイトであれこれ見ていたら、ボーイング社やマクダネル・ダグラス社などアメリカの六つの宇宙産業が合同でNASAに提出した、ロケットの商用化についての研究報告書が出てきた。第1回の宇宙葬以前の97年1月にまとめられた報告書だが、宇宙葬についてもかなり長く触れている。
「宇宙葬は水葬の現代版で、こうしたことに惹かれる同種の人々にアピールする。永遠の感覚は、石のモニュメントで得られるものではなく、無限の彼方へ向けての本質的に永遠である旅によって得られる。宇宙葬は、宇宙計画やSF、先端技術のファンを惹きつけるだろう」などとマーケットの分析をし、アメリカよりも火葬が一般化しているヨーロッパや日本などが大きな市場になりうると書いている。それぞれの地域の火葬の割合がどれぐらいかという表を載せ、ここにリストアップした12カ国だけでも、宇宙葬が0・5パーセントの市場シェアを占めることに成功すれば、1件あたり3000ドルとして年に1億5千万ドル(約160億円)の売り上げになるとはじきだしている。
「日本人は、新しい技術を進んで取り入れるし、たいていの西洋人よりも死を物静かに受け入れる。日本人の大多数が仏教徒であるという事実も灰を宇宙で葬るのに向いている。仏教は火葬を擁護していることに加え、灰を分けて親戚や友人、寺などに送る伝統がある」。西洋人には、灰の一部だけを取り出すことに抵抗があり、宇宙葬では灰全体を再火葬してコンパクトにする必要があってコストがかかるが、日本人相手ならそんな手間はいらないということのようだ。実際、日本の会社や政府までもがすでにセレスティス社に接触してきていると、この研究報告書は言っている。
 当然ながら価格を下げれば下げるほど市場は広がると考えられ、1000ドル以下になれば通常の火葬より安くなるという。人々が葬儀にかける費用はアメリカでは平均80万円、ヨーロッパなどはもっと安い。日本はデータによって異なるが平均で200万円から400万円も葬儀にかけている。こんなにお金をかけて葬式をやっている国はない。そういう意味でも日本はアメリカの宇宙産業が注目する宇宙葬のビッグ・マーケットになる可能性がある国なのだろう。

関連サイト
●日本語宇宙葬サイト「宇宙葬Earthview」。これまでの打ち上げやメモリアル・レセプションのレポート、映像、あるいは宇宙葬で葬られ「星になった人々」のプロフィールなどが掲載されている。それらを見ていると、しんみりした気分にさせられる。しんみりしてきたら、ホームページで「お花とメッセージ」を捧げられる。
●セレスティス社の業務を引き継ぎ宇宙葬をしているアメリカの民間宇宙会社スペース・サービス社。税込み105万円のパッケージで、打ち上げのビデオ映像や記念誌の作成、宇宙葬証明書の発行などのサービスがついている。
●宇宙葬や、砕いた骨をセラミック加工したプレート、ペンダントなどの葬送サービスをしているエターナル・ジャパン
打ち上げた人工衛星からいままさに見える地球や月の映像にアクセスできるサイトがある。これは、セレスティス社の人工衛星から展望できる地球の映像の見方を説明したページ

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