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2004.02.09

大統領候補はウェブログが好き

アメリカの大統領選挙は早くもヒートアップ。
各候補者はウェブログを駆使し、一喜一憂しつつ、
その活動をリアルタイムで伝えている。


●メディア・ボクシング

 CNNでアメリカの大統領選挙を見ていたら、キャスターが候補者たちにこんなふうに質問をぶつけていた。
「火星人にいま起こっていることを説明するとしたら、どう言いますか」
「ちっとも楽しそうに見えませんけど‥‥」
「あなたはもうずいぶん長い間そこに立ってメディアのインタヴューを受け続けてるけど、これがまともな民主主義国の選挙だと思いますか」
「あなたは最後まで戦いますか。それとも様子をみて撤退するつもりですか」
“メディア・ボクシング”という言葉が思わず頭に浮かんだ。候補者をわざと苛立たせるかのように挑発的な言葉のジョブを飛ばす。候補者はそれを右に左によけながら間髪を入れず答えていく。その様子は、まさにボクシング。しかし、彼らはそろって笑顔を絶やさず「とっても楽しいですよ」などと答えている。テレビを見ているほうは、「このウソつきが。こんなに好き放題に訊かれて楽しいはずはないだろうが」と思うが、候補者がげんなりした顔をすれば「大統領になる前からそんなではタフさがたりない」なんてことになる。まだまだ元気いっぱいで楽しくやっていますよ、という顔をしないわけにはいかないのだろう。
「まったく何を好きこのんで」という気もしてくるが、ターゲットはなにしろアメリカの大統領。言ってみれば地上最強の権力者なのだから、それぐらいの試練は仕方のないことだろう。‥‥などとテレビを見ているうちに、それまで全米的にはほとんど名前を知られていなかった候補者がお茶の間にすっかり浸透し、現職の大統領と戦うまでの知名度を獲得する。メディア・ボクシングもいっけん不毛のようだが、それはそれで理にかなっている。
 海の向こうのわれわれも、4年にいっぺん行なわれる選挙とはいえ、今年はとりわけそのゆくえが気にかかる。テロにあったアメリカはこの4年でもののみごとに保守化した。自由とか民主主義といったアメリカが金科玉条にしてきたことよりも“まず安全”ということになって、その結果しなくてもよかったかもしれない戦争に他国を引きずり込んで突入し、泥沼状態になっている。アメリカが“テロとの世界戦争”を始めていると考えている以上、どういう大統領になるかによって地球上の住人すべてが影響を受ける。となれば、アメリカ国民でなくてもその進展は気にかかる。

●ウェブログ選挙

 ネットに見る今回のアメリカの大統領選挙は、ひと言で言えば「ウェブログ選挙」だ。どの候補者も公式サイトとともにウェブログを立ち上げ、支持者たちがカンカンガクガクやっている。次々と書き込みがあり、それを見ていると陣営の動向がよくわかり、テレビとはまた別のリアルさがある。全米を転戦しながら行われる候補者のスピーチや、各メディアでの発言なども丹念に報告されている。
 とくにディーン前バーモント州知事は、イラク戦争に反対し、またリベラルな主張をして若者の人気を集め、ネット選挙を繰り広げてきた。ついこのあいだまでは民主党の最有力候補だったが、リベラルすぎて大統領選に勝てないと見られ、選挙戦撤退寸前に追いこまれている。とりわけまずかったのは、前回もちょっと書いたアイオワ州の党員集会後の絶叫演説だ。
「(アイオワで敗北して)だから何だって言うんだ? (次の)ニューハンプシャーに行くだけじゃない。サウス・カロライナにもオクラホマにもアリゾナにもノース・ダコタにもニュー・メキシコにも行くぞ! そしてワシントンに行って、ホワイトハウスを取り返す! われわれはあきらめないぞ! イエーイ!」
 公式ウェブログではさすがに「イエーイ!」はカットされているが、採録されている。この絶叫演説はテレビで何度も流され、こんなに「取り乱すようでは核のボタンを持つ大統領の資格はない」と不評を買い、さらに失速してしまった。このまま敗退すれば、この絶叫演説がディーンの敗北を決定したものとして今年の大統領選挙の歴史に残りそうだ。
 たしかにテレビでこのシーンを見るとディーンは興奮状態だが、テレビで繰り返し映された部分に続いて、「これは世代交代の選挙で、若い世代にたいまつを渡すのだ」と言っている。ディーンは明らかに若者を意識した選挙をしていて、若者のほうも選挙区にかけつけ、零下の寒さのなかでも家の扉をたたいてまわり、選挙区に行けない者も、「今日、党員集会だから行ってよね」と電話をかけまくっている。そんな様子もウェブログから伝わってくる。
 ディーン陣営のサイトは、公式サイトや公式ウェブログ以外にも「ディーン世代」と名づけたサイトができている。こちらは1年前にワシントンの大学1年生らが作った学生組織のサイトで、公式ウェブログに負けず次々と書きこまれ、彼らの動きが刻々と報告されている。
 
●クロスカントリー・ケリー

 ディーン陣営とは打って変わって意気揚々としているのは、ほぼ連戦連勝の快進撃を続けているジョン・ケリー上院議員のサイトである。もともとは有力候補だったのだが、「ディーン旋風」が巻き起こってすっかり影が薄くなっていた。それがトップに返り咲いたばかりか、いま大統領選挙が行われればブッシュに勝つという世論調査結果まで出たのだから、元気が出るのも当然だ。民主党員はともかくブッシュに勝てる候補者を探していたわけだから、この調査結果は、ケリーにはまたとない追い風だ。長丁場のアメリカの大統領選挙は波乱に次ぐ波乱が起きる。だから、いずれのメディアや評論家の予想も慎重だ。しかし、「最後まで戦う」と叫んでいたディーンも、17日のウィスコンシン州の予備選でトップをとれなければ選挙戦を断念すると支援者にメールを送ったそうだ。ケリーがこのまま民主党大統領候補の座を仕留める可能性は高くなってきた。トップ・ページの写真のケリーも何だか颯爽としてきて、早くも大統領の風格が漂っている。
 サイトでは、選挙戦をバス・ツアーに見立て「クロスカントリー・ケリー」というタイトルで募金をつのっている。選挙が行なわれる州が停留所で、「キャンペーンに燃料を入れてくれ」と言っている。
 トップページの募金の下には、旅行カバンの絵が描かれていて「ケリー・トラベラーに加わろう」と書かれている。何のことかとクリックしてみると、応援ボランティア募集のページだった。旅行サイトのような申し込みフォーマットができていて、いつどこの応援に行くか、到着はいつで出発はいつか、宿は自分で探すか提供してほしいのかがクリック一つで選択できるようになっている。このようにサイトでボランティア募集ができるようになって候補者たちは大助かりだろうが、応募するほうも、とくに学生などは、宿も提供してくれるわけだし、旅行がてら知らない土地に行ってみようかという気になるのではないか。アメリカの大統領選挙は「お祭り騒ぎ」でもあるが、いかにも気軽に手伝えそうな雰囲気だ。
 候補者のサイトにはそのほか、「支援サイトの作り方を教えます」とか「これこれの州は郵便で早めに投票できるのでよろしく」みたいなことが書かれ、懇切丁寧なガイド・ページがついていたりする。
 ネットでの選挙運動も年を追えば追うほど高度化している。潤沢な資金が動き、有能な人材が集まるアメリカの大統領選挙はネット選挙のパイオニア的な役割を果たしている。今回の大統領選挙では、さらにあるサイトのサービスが大流行だ。それは、ひと言で言えば一種の「出会い系サイト」。なるほどこうしたサービスを利用するのがアメリカの選挙では当たり前になっているのかと感心するが、それについてはまた次回。

関連サイト
●民主党の大統領候補指名を争うディーン前バーモント州知事のサイト「Dean for America」。米アイオワ州の民主党党員集会で敗れ、絶叫演説をしたディーン前バーモント州知事。演説の仕方が少々コワすぎた。この演説がたたって、はやリタイアか? 支持者のあいだでも動揺が広がった。昨年末までに4000万ドル(42億円)を集めたが、最初の2州のテレビ広告で資金を使い果たしてしまい、500万ドルしか残っていないという。緒戦で勝って逃げ切るつもりだったそうで「バクチがうまくいかなかった」と言っている。それにしても、すさまじい金の使い方だ。
●ディーン支持者の青年組織のウェブログ「ジェネレーション・ディーン」。勝っても負けても動向がリアルに伝わってくる。予想外の苦戦で、ウェブログでも大慌てだ。17日のウィスコンシンで勝てなければあとがないと、緊迫してきた。
●民主党候補の地位を獲得するまであと一歩、勝利が間近くなって活気づくジョン・ケリー上院議員の公式サイト。1月27日に民主党の予備選が始まってからだけで185万ドル(1億9400万円)が集まったのだそうだ。ほかの候補同様、ケリーのサイトにもウェブログがある。

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コメント

選挙もインターネットによる影響が強くなっているんですね。

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